ストレス

 まず始めに、ストレスとは「刺激によって心身に生じる傷害」のことです。傷害は負担や疲れ、緊張、不安、ダメージ、不快感などと置き換えるとわかりやすいでしょう。ストレスの原因になる刺激(ストレッサ―)には気温・騒音などの物理的(環境的)ストレス、人間関係・経済面などの社会的ストレス、睡眠不足などの生理的ストレスが存在します。

 人間は生きる目的として、常に何らかの欲求を持つ生き物であり、「快適に過ごしたい」、「新しい服がほしい」、「寝たい」などの欲求や希望があります。その欲求が上記のストレッサーによって邪魔されると不快感(欲求不満)を感じてイライラし、結果的にストレスが溜まるのです。同じ様に、2つ以上の欲求があり、その片方を満たすと残りの片方が満たされない状態(葛藤)も大きなストレス要因となります。寝たいけど勉強しないと明日のテストがまずいという状態がそれです。

 ストレスや葛藤、欲求不満が溜まるのは誰でも嫌ですよね。これらの心理的緊張状態が続くと、パーソナリティや社会生活にも支障をきたすことがあります。そこでストレスに対する対処方法(ストレスコーピング)を身に付けたり、自我防衛機構を働かせたりすることで、自己への負担を減らすのです。

ストレスコーピング
積極的対処:運動や音楽などにより発想の転換をするというように、前向きで建設的な新しい発想を心掛ける。
消極的対処:カラオケや飲酒で騒ぐ・寝て忘れるなど、発散的でその場しのぎの逃避的な対処方法。

 個人的な感想も含まれますが、やはり積極的対処の方がストレス要因を根本から見直し、同じストレスを繰り返さないようにするのに役立つでしょう。消極的はその場では良いですが、根本的な問題が解決するわけではないので、再び同じ様なストレスが生じることが多いと考えられます。しかし、積極的な対処も無理に「発想の転換をしよう」という考え方をすると、その考え方への固執がストレッサーになりますし、必ずしも根本から問題を解決できない場合は苦労が多い分、より負担が発生しますのでのでご注意を。両者とも一長一短です。

防衛機構
 防衛機構とは、欲求不満状態などによる心理的な緊張状態から、自我を守ろうとする無意識的な防御反応です。ちなみに自我とは、人間の欲望(エス)と良心(超自我)を調整するパーソナリティに関わるものです。(詳細は割愛)

1.抑圧:嫌なことは意識しないようにする。「臭いものにはフタ」
2.逃避:負の情動を感じるであろうと思われる場面から、不快感を味わう前に逃避。
3.合理化:「いいわけ」。本来の欲求が満たされなかったことを正当化することで、自分へのストレスを減らす。
4.否認:不都合な現状を軽視・無視する。⇒障害受容の問題としても重要!
5.昇華:社会的に認められない衝動を別の形に変えて表出。攻撃性⇒スポーツ。
6.置き換え:本来の対象ではなく、自分より下のものへ感情を向ける。「八つ当たり」
7.投影・投射:自分の感情・欲求を自分のものと認めずに、相手から自分へ向けられたものとする。
8.退行:依存的になる。飲酒などによる一時的な現実逃避。
9.反動形成:本心と裏腹の行動をとる。自信がない⇒強い態度で自信のなさを悟らせないようにする。
10.補償:自分の悪いところを直視せず、それを補うような行動・態度をとる。勉強はダメだからスポーツ。
11.同一化:自分よりも優れたもの・尊敬する人と同じ行動・態度をとる。代償的に願望を満足させる。
12.打ち消し:過去の行動に対する罪悪感を、その時とは反対の行動をして打ち消そうとする。「つぐない」


 防衛機構は日常的な発言の中にも容易に発見できるものなので、これらの反応を覚えておくと面白いですし、OTの仕事でも心のケアの場面で相手の心情を把握するのに活用できると思います。特に精神的に病的である場合ほど、抑圧・逃避・反動形成・打ち消し・投影が増え、逆に昇華や補償の考え方がしにくくなります。