自己分析と作業療法士の要素

・現場で動ける行動力・判断力・積極性
 元々、誰が発言したのかまでは把握していないのだが、友人から教わった個人的に好きな言葉がある。「実践なき知識は無力である。知識なき実践は暴力である。」これは何気なく言われた言葉だったのだが、強く脳裏に焼きついた言葉。例え知識があっても、現場で活用できなければ意味がない。宝の持ち腐れである。実際に、知識だけはあるが現場で正しく活用できていない医療人を見たことがあるので、これは実例としてよく把握している。また、知識がないまま行なう治療は非常に危険であるのは言うまでもない。知識がある上でそれを実践に移す行動力、そして知識からの判断力が必要であり、積極的に自らが治療していくのだという意識を持つべきだろう。これもOTとしてというよりも、医療人として絶対に必要な事柄である。行動力を持つにはその自信の根拠となる知識と、勇気・度胸が必要になると考えられる。知識があっても、「これで本当に大丈夫だろうか」「失敗したら恥ずかしい」と自分に自信がない、勇気がない性格では、失敗を恐れ現場で行動力を発揮できない恐れがある。これは経験を積みながら徐々に身に付けていくものなのかもしれないが、最初からある程度の自信を持って対応できるほどの勉強と、シミュレーション、分析を行なっておきたいものである。その点、自分は介護職として働いている現場派であるし、自然に行動力が身につきつつあるのは実感している。しかし、これはあくまで介護の分野での行動力であるので、これがそのまま作業療法の場面でうまくいくかどうかは保証されるものではない。全く現場を経験したことがない人よりは少しは有利かもしれないという程度だと控えめに捉え、今後も介護の場面で積極性を出すことで、少しでも早く作業療法の現場に適応できるような行動力を発揮する訓練を積むつもりで仕事をしたい。

・自己管理能力
 これはOTに限らず、全職業で共通して言えることだが、仕事をするには自己が安定している必要がある。患者がやる気でも、OTが疲れ果てている、体調が悪い、精神的に不安定で病んでいるようでは、十分な治療が行なえないのではないだろうか。治療する側は治療を受ける側よりも、常に良い体調を維持しておく必要があるのだ。体力的にも精神的にも充実していることが望ましい。そういう意味では、個人的には特に足りない要素の1つと思われる。前述したとおり、個人的には真面目という要素が強く、その真面目さから当面の問題を後回しにできない、力の加減・配分が苦手、自己を大切にできないという欠点があり、健康面を大きく崩している現状がある。計画性、論理性よりも、真面目さから来る義務感の方が上回ってしまっているのが現状だ。実際に寝不足、体調不良の時は、介護の場面でも集中力が薄れて満足の行く仕事ができないことが多い。時には妥協し、自分に無理がないよう、自己管理能力をつけるのは今後の大きな課題である。

・精神分野への特化・カウンセリング能力
 患者は治療段階の中では特に急性期、また障害を受容するまでには精神的に不安定になりやすい。それは当然のことであるし、その落ち込んでいる中、どうやって主体的にリハビリに取り組んでもらうかが最初の大きな課題になると考えられる。それは本人がやる気を出さない限り、どんなリハビリも本来の効果があげられないからだ。このことも、ボランティアを通じて経験として感じている事柄である。結局、回復する気がない人は、セラピストがどんなにがんばっても回復させられないのが現実。では、どうやって回復する気になってもらうか、障害を受容してもらうかが肝心となる。そのためには辛抱強く相手の話を聴いたり、相手が自分で答えを出すのを待ったり、相手の現状を内的に体験し理解する努力など、カウンセリング能力が必要となる。細かい動作、表情の変化を見極められる、精神分野への特化が必要とされるだろう。これは個人的には薬物依存、鬱、引きこもり、譫妄、アルコール中毒等、いくつかの精神障害と関わったことがきっかけでOTを目指していることもあり、精神分野には特に強い興味がある。また介護の現場でも、自分の役割が果たせなくなったことに対する自己への不満の声を聴き、職場の同僚がどう励ますかを分析して勉強している最中である。実習前に、机上での勉強と現場での勉強の両方とも経験できるので、この点では有利だと感じている。実際の声を聞き、障害体験を重ねることで、その患者の内心を感じやすくするよう心掛けたい。

5.最後に
 長々と書いてきたが、これまで挙げてきた要素を統合すると、優れたOTは医療人としてというよりも、人として魅力的な人格者であるということが見えてこないだろうか。OTは聖職者とまでは言わないが、常に優れた行動を求められるのだ。なので、まずは勉強と同時に多くの経験を積み、患者に安心感を与えられるような優れた人格者を目指すのを第一に考えて行動していくのが最良であると結論付ける。

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